土星と慈愛の魚座の集まり
この映画と3人のチャートの中の土星のシンボルを学ぶために、「おくりびと」の3つのメインテーマを抜き出しましょう。
それは、「死」、「父親」、そして「人生の目的」です。
3つのチャートには共通して、土星が感情との結びつきが強い水のサインにあります。そしてまた、俳優の山崎さん本木さんの土星は魚座にあります。これは慈悲、慈愛のサインですが、土星が水のサインにある場合、感情をブロックしてしまう傾向があります。(大悟は父親が自分を見捨てたことへの痛みを抑圧してしまい、だから父親の顔が思い出せなかったのです)
この土星が感情を抑圧するその最終的なゴールは、感情を解放させるだけでなく、そこから学ぶことにあるのです。そして魚座も射手座もともに、教えることや学びに関係する柔軟宮なのです。
私はいつも、蠍座の土星(この「おくりびと」の監督の土星は蠍座にあります)を説明するのに、「凍った死体」だと言っています。これは、決して起こりえない永遠の別れ、表現されえなかった激しい痛みを表していると言えるでしょう。土星も蠍座もともに、コントロールしたり、止めて塞いでしまう傾向があります。土星がこの位置にある時は、痛みを解放して、そして許しを表現するまでには時間がかかりますし、とても困難なプロセスになります。「変容のプロセスが妨げられている」と言えるでしょう。
滝田さんの蠍座の土星に冥王星が90°の角度をとっていることで、よりいっそうこの緊張の傾向が強められることになります。「おくりびと」は、創造的な方法を通して、獅子座の冥王星の(獅子座の月の助けもあります)素晴らしい成長過程を描いていると言えます。
獅子座は舞台やドラマチックな演出、舞台に関係していますし、冥王星は死と変容を意味します。それがゆえに、前に触れたこの映画の舞台的な要素がこのテーマを生き生きと展開させてゆくのです。
魚座の土星は、氷を溶かし、硬直した死体をマッサージしなくてはなりません。そして、この死体は、尊敬され、愛され、そして賞賛されるに値するのだと言うメッセージを伝えることで、私たちが慈愛とともに人生を充実させていけるよう、導いてくれるのです。
本木さんと山崎さん、二人のチャートの魚座の土星は、重なり合っています(コンジャンクション)。二人の年齢は、この天体のちょうど1サイクル分違います。それもあって、「父親と息子」、そして「上司と従業員」という関係性がこの映画では明白ですし、そこに射手座的な要素である「先生と弟子」という関係性が加えて描かれています。
そして非常に深いレベルでは、彼ら二人は監督の無意識のアーキタイプの特徴を表わしています。そのことについては推測でしか言えませんが、滝田さんが9歳か10歳ぐらいの時、土星が魚座入りして彼の太陽(父親イメージ)とスクエア(90°)になった時、父親との関係に何かが起こったのではないかと考えられます。
俳優二人の魚座の土星が、「おくりびと」の監督の太陽にスクエアになっているので、二人は監督に多くの無理をさせたことでしょうし、監督もまた、二人に多くを要求したのではないでしょうか。
「おくりびと」は、過去から負った深い傷を、芸術と慈愛を通して解放し、そして癒していくプロセスを描いた作品です。
今後もまたこのテーマを深めて行きたいと思いますが、今回はこの辺で一度、終わりにしたいと思います。
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