【トランスヒューマニズム】を知っていますか?           テクノロジーと人体の融合の行く末

人類には、死に関して認めざるを得ない二つの見解があります。一つは、霊長類から進化した人類は、死の恐怖に悩まされ続けているということ。もう一つは、科学技術の恩恵により人類の寿命は随分と長くなりましたが、今後はさらに長く生きられる時代がやってくるということです。しかしながら私達は皆、遅かれ早かれやがては死にゆく存在なのです。

しかし、トランスヒューマニストは全く違う見解を持っています。トランスヒューマニストの哲学者、指導者、信奉者達は、いつか科学と遺伝学が、高度に進歩したコンピュター技術と融合し、死の問題は解決され、人類は永遠の命を手にすると固く信じています。命あるものは必ず死を迎えるという大自然の法則から、人類は永遠に解放され、死を克服し、病気になることすらなくなるであろうとトランスヒューマニズムでは説いています。今後、肉体とテクノロジーの融合はさらに進み、生物学的な肉体は電脳ボディーに取って代わられるでしょう。そうなればあと必要なことは、人間の心をコンピューターに転送するだけとなります。(精神転送




死を克服する方法をグーグルに尋ねた人がいると聞いたことがありますが、ただの冗談だと思っていました。けれども、トランスヒューマニズムについて私が真剣に研究を始めてみると、彼らの活動内容があまりに恐ろしいものであると分かったのです。一流の大学教育を受けた人、天才的コンピューター技術者、あらゆる分野のマニア、人工知能の未来を思索する人といった、多分野の人々が幅広くこの活動に関わっています。シリコンバレーその他地域からのテクノクラート(技術官僚)や大富豪達は、死亡宣告を受けた人間を、冷凍保存する権利を成立させるプロジェクトに関わっています。もし、体全体を保存するのに十分な資金がない場合は、胴体だけ冷凍保存すると安価で行えます。いつか科学技術の進歩によって、冷凍された人間を生き返らせることが可能となった時には、老いて衰えた肉体を、まるで機械を交換するように、新品の体に取り替えることだってできるでしょう。

もちろん、そのようなことが本当に可能かどうか、という科学的根拠も証拠もゼロに等しく、従来の科学業界は、こういった考えをひどく嫌い、彼らの未来予測に眉をひそめ、決して認めようとはしません。様々な種類のトランスヒューマニスト活動がある中で、何がその始まりとなっているのかを深く掘り下げてみると、ニーチェのような哲学者の解釈を捩じ曲げ、遺伝子学の理論やコンピューターに関する膨大な知識を、SF小説やSF映画に織り交ぜたものであることが分かってきました。

トランスヒューマニズムにおける有名な理論家やリーダー(トランスヒューマニズムとは、人間を超えていくの意味)が数多くいますが、私はここで、彼らの心理的特性に関して、特に触れるつもりはありません。彼らの心理面はあまりに複雑怪奇で、様々な強迫観念が含まれているからです。例えば、先駆者や預言者のごとくありたい強迫観念から、宗教的リーダーになりたい強迫観念、みせかけの神秘家や、精神が錯乱している状態の者までいます。彼らに共通している特質は、死に対する完全なる拒絶心を持ち、人工知能の技術によって永遠の命を手にすることができるという幻想に生きていることでしょう。私が関心があるのは、この新しい社会現象が、アーキタイプとシンボルによってどのように表現されるのか、ということだけなのです。

トランスヒューマニズムが犯した最大の過ちは、脳内の顕在意識を司る部分が、人間のアイデンティティであるとしてしまったことです。つまり、トランスヒューマニストは、人間の脳を(ざっくりと言うと、全ての知識と思考を)、コンピューターへダウンロードし、次に新しい体へとアップロードすることで、人間性を保存することが可能であると信じています。言い換えるならば、彼らにとって人間の本質とは、脳であるということです。心理学的見地では、彼らは人間のエゴまでも無くすことができると考えているようです。完全にこれは月的見解と言えましょう。私はこれを、月のアイデンティティと呼んでいます。月のアイデンティティは、歴史的・社会的に条件づけられたもので、つまり、私の経験したこと(データ)には、色々な可能性があったかもしれないという意味を含んでいます。例えば、私を育てたのは生みの親だったかもしれませんし、養父母だったかもしれません。この学校か、あるいは他の学校で学ぶ選択も可能性としてあったかもしれません。私の実際の経験に基づいて形成されたアイデンティティは、一連の選択や偶然の出来事によって左右されますが、それは私の真の自己ではありません。

さらに言うと、無意識はどこにあるのでしょうか?無意識も全て、コンピュタープログラムにダウンロードするつもりなのでしょうか? もし、脳をダウンロードするという夢物語が可能なら、私の脳内データは全て正確にアップロードされるでしょう。しかしながら私の無意識は、一列に規則正しく並んでいるデータではありません。無意識とは、私の意識的マインド、環境、リレーションシップ、同じく無意識と共にプロセスを歩んでいる周囲の人々との相互作用に依存している複雑なプロセスです。つまり、夢、人間関係、愛、芸術などを通じて表現されることで初めて形を持ち、自己の存在を認識できる創造的プロセスであり、これこそが、真の人間の姿だと私は思うのですが。そんな簡単な話ではないですよね?

そして、無意識からの影響を常に受けている、最も重要で複雑な創造的プロセスのうちの一つは、死に向かうプロセスです。死後の世界と無関係に(明らかに、トランスヒューマニストたちは、死後の世界を信じていませんが)、死とは、肉体的存在の終焉であるだけでなく、絶え間なく変容し、肉体的・心理的・精神的に再生するための、必要不可欠なエネルギーでもあるのです。

辛いことではありますが、それでも命のはかなさは、命が持つ素晴らしい側面の一つで、私達を魅了してやみません。私達は命を尊びます。なぜなら、命には期限があり、すぐに過ぎ去ってしまう儚さこそが、その恩恵でもあるからです。日本人が持つ美しい観念、「もののあわれ」はまさに、そのことを表しています。一方、トランスヒューマニズムは、永遠の「桜の花見」を望んでいるわけです。しかしながら、もし桜がいつでも咲いているとしたら、その美しさを愛で、その命に感謝することができるでしょうか?
トランスヒューマニズムには、人生の意味を探究し、その意味を理解するという視点が欠けていて、恐怖すら感じます。もちろん、健康増進や脳の潜在能力の開発、または生活の質を向上させるためにテクノロジーを使うことは、歓迎されるべきでしょう。しかし、人間がロボットやアンドロイドと化し、人としての命の存在そのものが弱まることには、ぞっとして背筋が凍ります。かつてナチスの医師たちは、優秀な科学者であり、テクノクラートでした。しかし、彼らが行った実験の結果引き起こされたものとは、人類にとってはあまりに多くの痛みと苦しみでしかありませんでした。

このビジネスと研究に携わった企業と研究機関は、将来的に患者を呼び込み、冷凍された肉体を数多く保存していくことになるでしょう。しかも肉体は「冷凍されている(’frozen’)」のではなく、「一時停止させる(’suspended’)」という認識となっていく、というのです。この英語のニュアンスは面白いと思うのですが、冷凍された人々の魂の、形而上学的な状態をよく表しています。彼らは一時停止し、天国と地獄の中間に留まった存在となり、その魂は解放されることなく、ひどい地獄のような状態に一時停止されたままとなるのです。

そして、これもまた確信していることなのですが、トランスヒューマニズムの信奉者たちは、命を恐れ、生きることを恐れています。ひとつ、いい例を挙げましょう。この活動に傾倒していた若者に、これまで彼女と付き合った経験があるかどうか質問したところ、これまで人間の女性と付き合ったことはないと答えたそうです。彼は恋人やセックスパートナーとして完璧な新型の女性型アンドロイドの開発を心待ちにしていました。人間の彼女は、彼を欺いたり見捨てたりするでしょうが、アンドロイドならそんなことはしないでしょうから。

結局、私は、トランスヒューマニズムとは、「積荷信仰(カーゴ・カルト)」現象に相当するものだと理解するに至りました。カーゴ・カルトとは、ある未開の島に、飛行機の貨物に救援用の食料と薬を入れて届けたところ、現地の人々は、天国から神のごとくやって来た貨物への信仰を始めるというような現象のことです。このような現象は、原始的な未発達な魂に、高度な科学技術という衝撃を与えた結果、起きてしまうわけです。即ち、トランスヒューマニズムは、この現代社会、特に西洋社会において、私たちが信仰を深め精神性を高めることに失敗したことの表れなのではないかと、私は思うのです。(終)


注釈(ウィキペディア掲載より)
トランスヒューマニズムは、新しい科学技術を用い、人間の身体と認知能力を進化させ、人間の状況を前例の無い形で向上させようという思想である。

精神転送とは、トランスヒューマニズムやサイエンス・フィクションで使われる用語であり、人間の心をコンピュータのような人工物に転送することを指す。精神アップロードなどとも呼ばれる。(英語では、mind downloading, whole brain emulation, whole body emulation, electronic transcendenceなどとも呼ばれる)。

テクノクラートとは、ビューロクラート(官僚)のうち、高度な科学技術の専門知識と政策能力を持ち、なおかつ、国家の政策決定に関与できる上級職の技術官僚(技官)のこと。高級技術官僚とも呼ばれる。

カーゴ・カルトとは、主としてメラネシアなどに存在する招神信仰である。いつの日か、先祖の霊・または神が、天国から船や飛行機に文明の利器を搭載して自分達のもとに現れる、という現世利益的な信仰である。直訳すると「積荷信仰」。

翻訳:八田直美(八田占星学研究所

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WHAT IS WRONG WITH TRANSHUMANS?

Concerning death there are two notions we cannot deny: one is that since primates became humans, they have been haunted by the fear of death; the other is that thanks to technology, the expectancy of human life has increased considerably, people are expected to live longer and longer. But sooner or later, we all are going to die.

The transhumanist movement has a different opinion. Their philosophers, leaders and followers, firmly believe that one day science, genetics combined with computer development, will find a solution to death, men will become immortal. Transhumanism preaches total emancipation from the laws of nature; men will not be prone to death and disease anymore; human flesh will blend more and more with technology until biology will be replaced by a sort of cyber body. You will only need to have your mind unloaded into a computer.

I had heard that people had asked Google to sort out the problem of death and I thought it was a joke; but when I started reading and studying seriously about this tendency, I was horrified. The range of people involved in these believes is quite broad, it includes some people trained in prestigious universities, computer geniuses, all sorts of geeks, and futuristic speculations about artificial intelligence. Some technocrats and millionaires from Silicon Valley and other areas are involved in projects consisting in freezing people right after they are declared dead. If you do not have enough money to pay for keeping your whole body, having your head cut off and frozen is cheaper; when technology is ready you will be revived, and have your old decaying body replaced by a brand new mechanical body.

Sure, there is zero serious scientific evidence or proof that such a thing can be made to happen. The scientific community despises these ideas and frowns upon their futurology; and with a deep research on the origins of the transhumanist movements (there are all types), one will find that the sources are a mixture of science fiction novels and movies, some twisted interpretations of philosophers (such as Nietzche), theories about genetics, and lots and lots of computer knowledge.

There are many names of the theorists and leaders of transhumanism (the term means going beyond the human), but I do not want to give or talk of any in particular, their profiles are far too complicated and even scary; their psychological profiles include a range of complexes, from the prophet complex to the religious leader, from the pseudo visionary to the delirious one; what they have in common is the total rejection of death and the fantasy that they can live forever by means of artificial intelligence. I am only interested in the archetypal and symbolical expression of this new phenomenon.

The main mistake of transhumanism is reducing human identity to the brain conscious contents; transhumanists believe that downloading the brain (roughly, all my knowledge and thoughts) to a computer and then uploading it to a new body preserves our humanity; it means, for them, that we are our brain; in psychological terms, they think that we can be reduced to our ego. This is a total lunar perspective; I call this the Moon identity. This type of identity is historically and socially conditioned, which means that the contents (data) of my experience could have been different; for example, I could have grown with my real parents or with foster parents, I could have studied in this or that school and so on. A series of choices or accidents determine my historical identity, but no my real Self.

And then, where is the unconscious? Is all my unconscious life going be downloaded into the computer program too? In case the fantasy of downloading the brain were made possible, all my brain data would be uploaded, fine; my unconscious, however, is not a series of data, but a series of complex processes that depend on the interaction with my conscious mind, my environment, my relationships and people around me with their own unconscious processes. We are talking of a creative process that cannot be determined or identified until it expresses itself, through dreams, relationships, love, art, etc. This is what a real human being is. Not easy, is it?

And one of the most important complex processes that the unconscious is constantly working with is death. Independently of an After Life (obviously transhumanists do not belief in an After Life) death is not only the end of our physical existence, but a necessary energy for constant transformation, for constant renewal (physically, mentally and spiritually).

Though painful, one of the most fascinating aspects of life is its evanescence; we value life because it is a short-term privilege; the mono no aware is a beautiful Japanese concept. Transhumanism wants an everlasting sakura no hanami. Would we be able to appreciate the blossoming if it was always there?

Transhumanism lack of perspective about the meaning of life, or even the search of meaning, is appalling; sure, using technology to enhance our health, brain capacities and quality of life, is perfectly welcome, but reducing existence to become a sort of robot or android is frightening. Nazi doctors were brilliant scientists and technocrats; their experiment provoked too much pain for mankind.

The companies and institutes involved in the business and research of this tendency call their patients, meaning the bunch of frozen bodies preserved for the future, as ‘not frozen’ ‘but suspended’. The English nuance is interesting because it describes the metaphysical condition of the soul of those frozen people; they are suspended, they are in a sort of limbo and their souls cannot be liberated, they remain suspended in an infernal state.

I am also convinced that the followers of this sort of sect are afraid of life and afraid of living. One example can give you an idea. When asked if he had ever had a girlfriend, one young man belonging this movement, declared that not, he was waiting to have some of the new female androids that can be perfect lovers and sexual partners; real ones can cheat on you and abandon you.

The way I explain to myself transhumanism is that it corresponds to the Cargo Cults phenomenon. Since in certain islands the aid of food and medicines arrive in cargos by planes, the natives develop the cult of those cargos because they came from heaven. It is the result of the impact of science and high technology on our primitive soul. It is also the failure of religions and spiritual development in the modern world, mainly in the Western World.(the end)

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by Xavier_Astro | 2017-08-01 00:00 | 社会  

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