星の王子さま

「私たちには、倒れる権利ではなく、ただ、自分自身を高める権利だけがある。」
1943年にアメリカで出版された「星の王子さま」の著者、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリは、かつてこのように書きました。「星の王子さま」は、あるパイロットのお話です。彼は、人生と自由と愛に瞑想するのと同じように、飛行機で空を飛び、そして、空での冒険を本に書いて人生を過ごした人でした。彼は、素朴で繊細な、まるで詩のような表現で、人間の心への深い理解をメッセージとして伝えました。彼のメッセージは、子供でも理解することができ、そしてまた、どんな大人からも、そのメッセージの中にある文学的・哲学的価値を賞賛されました。



「星の王子さま」は、世界で最も読まれた本の中の一冊です。今までに、250もの言語に翻訳されてきました。飛行機が故障したために砂漠の中でどうすることもできなくなってしまったパイロットが、他の星からやって来た、金色の髪の不思議な小さな男の子と出会うというこの物語を、いったい誰がまだ読んでいないというのでしょうか?そして、どれほど多くの人たちが、この2人の間に芽生えた友情と、2人が見つけた人生の意味に涙したのでしょうか?

かつて「星の王子さま」を読んだという多くの人々と同じように、私も子供のころにこの物語を読み、大学では研究をしました。この本を低く評価している人々がいるにも関わらず、20世紀の偉大な哲学者たちによって、20世紀における最重要本の中の1冊とみなされていたことを知りました。そのようなわけで、私はこの本をもとに製作された新しいフランスのアニメーション映画 『リトルプリンス 星の王子さまと私』 (原題:”The Little Prince”2015年製作)に対しては、あまり気が進まなかったのですが、それについてのコラムを書かなければならなかったので、この映画を見ることにしたのでした。

この映画は、原作の小説に、一人の少女と老飛行士との出会いを描いた現代の物語を組み合わせて作られています。少女は年老いた飛行士に、星の王子さまの話を聞き、彼の人生と深く関わっていきます。そして、老飛行士との関わりを通して、ついには少女の人生が変化していくこととなるのでした。多くの才能ある人々と、高度な技術力を駆使して作られた映画でしたので、製作には多大なお金が投じられました。見た感想ですが、私をがっかりさせるものではありませんでした。「星の王子さま」の物語のだいたいのシーンはよかったと思いますが、他を構成する要素については、私はよくわかりません。私はこの映画を、原作を愛してやまない方々か、もしくは原作をまだ読んだことがない方々にお勧めしたいと思います。それが、この物語を新しく知るよいきっかけになるのではないでしょうか?そういうわけで、私は「星の王子さま」について、ここでみなさんにお伝えしたいと思います。

この映画を観ることで私は、心の奥の特別な引き出しの中にしまい込んでいたこの本について熟考することとなりました。そして、カウンセリングやワークショップで提供できる題材があったのにも関わらず、どれだけ長い間この本を放りっぱなしにしてきてしまったのかに気づきびっくり仰天しました。

「星の王子さま」は、修復できないほどの喪失による、悲しみや心の痛手の物語です。私たちのハートの傷を癒す道が描かれており、希望と人生の意味についてのメッセージを伝えています。これは、文学の中に集約された最高のセラピーと言ってよいでしょう。

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900年6月29日・am9:15・フランス・リヨン生まれ)は、非常に貧しい貴族の出身でした。彼は4歳で親を亡くしました。それは蟹座に太陽を持つ人にとっては、とてもひどい悲劇的な出来事でした。というのも、12サインの中でも蟹座は、心地よく身を落ち着けることができる家族への愛着が、最も強いサインだからです。アントワーヌは心に喪失感を持ちながら育ちました。そして、おそらく自分の心のふるさとや、心の拠り所を求めていたのではないかと思います。飛行機で空を飛ぶことで、彼は自分の中の心の拠り所が欠けていて何か不完全であり、そして自分では決して誤って踏み入れたくない不毛の領域であったということに気づかないようにしていました。彼の出生チャートには、幸せの絶頂と悲しみのどん底、上がったり下がったり、飛んだり墜落したり・・・といった二つの間を絶え間なく行ったり来たり動き続けるエネルギーが示されています。
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Antoine de Saint-Exupéry
Jun/29, 1900
9:15 am
in Lyon, France

出生チャートの一番高い場所であるMCに、アントワーヌは火星を持っています。男性的で好戦的な衝動を示す火星は、彼の場合双子座にあるのですが、双子座の火星は空への賛美とコミュニケーションを表しています。
彼は航空郵便の会社で数年もの間働いていましたが、アフリカ-フランス間の飛行中にサハラ砂漠に不時着し、数日もの間、道に迷い、水もなく乾ききった状態を過ごし、幻覚症状を体験しました。彼のビジョンは、これらの出来事を通じて受け取られたものです。私たちの一生の中で、最も自分自身が露わになるような体験がどのようにして生み出されるのかに気づく価値がありましょう。そうした体験は、完全に自分を見失い、見捨てられたと思うしかないような予期せぬ事故や状況におかれた時に起こってくるものなのです。もしも私たちが、最も危機的状況の中ででも自分自身に開くことができるならば、私たちは光を見出すことができるのです。

「星の王子さま」が伝えるテーマの一つは、「故郷へ帰れない者」です。パイロットは、自らの交通手段である飛行機の故障で家に帰れなくなりました。そして王子さまは、自分の故郷の小惑星に帰ることができませんでした。というのも、王子さまはバラとの関係性が悪くなり、また、彼の体は今となってはあまりに密度が濃く重すぎて、遠い星まで旅することができないからでした。このことに関しては、多くのアプローチ方法があります。もし私たちが、幸せな子供時代を過ごしてきたのなら、成長した後、大人として人生の苦難と直面したとき、私たちは愛と安心を感じていたときの楽園のような心の状態へ逃げ込むでしょう。もし私たちが、悲しみと困難に満ちた子供時代を送ってきたとしたら、感情はもっと難しく複雑になっていたでしょう。なぜなら、私たちは、自分がすでに持っているものには目を向けず、誰かあるいは何かが、自分から奪い去ってしまったと感じる「何か」を切望するからです。この場合ですと、私たちは、「人生は私たちに何かを与える義務があると思いたいのだ」ということではないかと思うのです。

アントワーヌ・デ・サン=テクジュペリにとっての「砂漠」は、大都市と共にある現代社会を表していました。人生の本質ともいえる愛や、精神的な宇宙とのつながりを感じたり、感謝することができないすべての人々を表していました。4室のやぎ座に土星を持つことは、(4室はルーツや心の拠り所の領域ですが)、この異郷での生活や、両親との死別、没落貴族の出身であること、そして孤独を表しています。その領域は何の花も咲かない不毛の場なのだと思われます。

しかし、パイロットと星の王子さまとの出会いは、再生とヒーリングのプロセスを引き起こしました。はじめ、大人は、王子さまの声に耳を傾ける力を潜在的に持っていました。もし、私たちが注意深くこの物語を読んでいたなら、王子さまはほとんど質問には答えず、もっぱら「質問をしている」ことに気づくでしょう。大人としての私たちは答えを求めるだけで、内なる子供の声に耳を貸そうとはしません。ユングはかつてこう言いました。「問うことは、答えることよりも重要である。なぜなら、自分のハートに問うことは、ユニークでクリエイテイブな方法で魂を活性化させるからだ。」大人たちは、データや成功の秘訣を欲しがりますが、子供たちは人生の神秘と遊んだり、心を通わせたりしたいのです。

砂漠での不時着もまた、深い憂鬱や、メランコリーな状態、うぬぼれと高慢なエゴによる挫折を意味しています。その孤独に満ちた場所で、私たちは星をながめ、宇宙の荘厳さを見つめ、金色の髪の内なる少年と出会うのです。しかし私たちは、内なる少年の声に耳を傾けることを学ばねばなりません。彼と心から知り合い、彼を守るすべを見つけなければなりません。私たち自身の内側にいる星の王子さまは、目では見ることのできないものを、自らの心の目でもって見ることを教えてくれているのです。

この本を読むことを通じて、私たちが開かれ成長していくための多くのテーマが、まだまだ沢山あると思います。私はこのことをワークショップでご紹介し、他の有名な児童向けのアートや現代児童文学との関連へと議論を発展させていきたいと思います。文学的視点から見てこの繋がりは、「星の王子さま」と「ピーター・パン」「不思議の国のアリス」の中に関連性を発見したフランスの学者からのもので、私としてはそこに「オズの魔法使い」も加えようと思います。これらは全て、現代に生きる神話なのです。(終)

翻訳:八田直美     監修:GIRASOL

今月より、占星術カウンセラーであり、14年来のザビエ門下生である八田直美さんに翻訳をお願いすることになりました。
プロフィール
心理学をベースとした人事アセスメントツールの法人向け提供サービス企業での勤務を経て、香り、ボディワーク、色彩、シンボルなどを通じて、体と心の探究をすすめる中でアストロロジーと出会う。
2001年よりアストロロジー個人セッション、及び勉強会講師として活動を開始。
アストロロジーと人間、色彩、植物、身体、数、形などとののつながりの面白さと、象徴学的、心理学的見地から見たアストロロジーの奥深さに魅了され、学びを続ける。
現在は、自然と人への探究を続けながら、自分を知り、今の流れを信頼し、自分を生きるためのアストロロジーを提供している。
ザビエ・ベトコート氏の心理占星術スタディグループ「GIRASOL」には、2002年より参加、アストロロジーのエッセンスと、人間への深い洞察を学び続けている。
八田占星学研究所ブログ

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THE LITTLE PRINCE
         
‘We do not have the right to fall down, only to elevate ourselves’, wrote once Antoine de Saint-Exupéry, author of ‘The Little Prince’ (published in the USA in 1943). This is a pilot speaking who spent his life flying planes and writing books about his adventures in the air, as well as meditating about life, freedom and love. He conveys a deep understanding of the human heart in a simple and subtle poetical manner; a child can understand his message, and any adult can admire the literary and philosophical value.

‘The Little Prince’ is one of the most well read books in the world; it has been translated to 250 languages. Who has not read the story of this pilot, stranded in the desert due to a plain breakdown, who finds a mysterious blond little boy from another planet? And who has not cried with the friendship between them and their discovery of the meaning of life?
         
Same as millions of people who have read The Little Prince, I read it when I was a child and then studied it at the University. I learned that although some people looked down on it, several of the greatest philosophers of the XX century considered this short novel as one of the most important books of the century. For this reason, I was a reluctant about the new French American animation made out of the book (The Little Prince, 2015), but I watched it because I had to write an article about it.

The movie combines the original novel with the modern tale of a little girl who meets the old aviator; she hears the story of the Little Prince, becomes deeply involved with his fate, and this fact eventually changes her life changes. It is a millionaire production with lots of talent and high technique; I was not disappointed, I liked mostly the part of the Little Price but I am not sure of the other ingredients. I recommend it either to those who admire the book or to those who have not read it yet; it is a good way to discover it. This is why I mention it.
Nevertheless, watching this film made me ponder about this book I had kept in some special drawer at the back of my mind; I was astounded how much I had neglected, for all these years, the material it offers for counselling and workshops!

‘The Little Prince’ tells a story of irreparable loss, describes the way to heal the wound of our heart, and conveys a message of hope and meaning of life. It is the best therapy ever epitomised in literature.

Antoine de Saint-Exupéry (Jun/29, 1900; 9:15 am, in Lyon, France) came from an impoverished aristocratic family; he became an orphan at the age of four. A terribly tragedy for a Cancer person; the sign of the zodiac the most attached to his family nestle; Antoine grew up with a void in his heart, and, most probably, with a wanting of roots. Flying was a manner of avoiding contact with his deficient emotional foundation, a sort of barren land he did not want to tread on. His chart shows a constant dynamics between heights and depths, up and down, flying and falling.
On the MC, the highest point in the chart, Antoine had Mars, his male fighting impulse, in Gemini, a sing of air and communication. He worked for some years in an airmail company; it was in one of these travels between Africa and France that his plane fell on the Sahara desert, he spent some days lost and dehydrated, and had hallucinations; his vision comes from these events. It is worth noting how the most revealing experiences in our lives are produced by unexpected accidents, situations where we feel completely lost and abandoned. At the peak of a crisis, if we are able to open ourselves, we can see the light.

One of the themes of the Little Prince is the theme of exile. The pilot cannot go back home because his means of transport are disabled; the child cannot return to his Asteroid because of his difficult relationship with a rose and because his body is now too dense to travel back. There are many ways to approach this. If we had a happy childhood, when we grow up and face the hardships of adult life we feel exiled form the paradise of those times when we felt loved and secured. If we had a sad or difficult childhood, the feeling becomes more complicated because we yearn for something we did not have but which we feel that somebody, or something, took it away from us; in this case we want to find something life owes us.

For Antoine de Saint-Exupéry, the desert represents the modern world with its big cities; it stands for all those people who cannot feel or appreciate the essential things of life, such as love and spiritual connection with the universe. Saturn in Capricorn in his IV House, the area of roots, represents this exile, the loss of his parents, the aristocratic background, and the loneliness. It would seem that nothing can blossom out of it.

But the encounter of the pitot with the little boy sets up a process of regeneration, a healing process. First, the adult is capable of listening to the little child. If we read it carefully, the Little Prince rarely answers questions, he mostly asks questions; as adults we want answers, and we do not listen to our inner child. Jung once said that questions are more important than answers, because interrogating our heart activates the psyche in unique and creative ways. Adults want data and recipes; children want to play and communicate with the mysteries of life.

Falling into de desert also means a deep depression, a melancholic state, a collapse from an inflated and proud ego. It is in that solitude where we can gaze at the stars, at the magnificence of the universe, and meet our golden inner boy. But we have to learn how to listen to him, become acquainted with him, and discover how to protect him. Our Little Prince teaches us how to see with our heart what we cannot see with our eyes.

There are many more themes we can open and develop through this book; I would like to propose it for a workshop and expand it with other famous children of art and modern literature. This association (in Literary terms) comes from a French scholar who discovered a relationship of the Little Prince with Peter Pan and Alice in Wonderland. I would also add the Wizard of Oz. All these are modern myths.(the end)

星の王子さま―オリジナル版

サン=テグジュペリ / 岩波書店


リトルプリンス 星の王子さまと私 [DVD]

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by Xavier_Astro | 2016-03-01 00:00 | 文学  

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