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ライフ・オブ・パイ〜自分自身のシャドウの飼いならし方(2)

ヤン・マーテルの月は獅子座で、土星とオポジションなので、もしパートナーとの間でうまくいかないようなことがあれば、感情を支配されてしまいます。そして、愛が足りないという思いを埋め合わすために、酷く自己中心的になったりもするのです。パイは信頼できない語り手で、というのは、パイが本当のことを話しているのかどうか、読者や観客には分からないからですが、占星術的心理学的に観れば、このことはなんら問題になりません。それが事実であろうが嘘であろうが、パイの心理は私たちに曝け出されているからです。アーキタイプ、夢、幻想や実際に起きたことというものは、現実の象徴的な表現であるのですから。
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Yan Martel
born on Jun/25, 1963,
in Salamanca, Spain
time unknown




このようにパイの自己愛的な強迫観念は、獅子座の月に表現されるように、結局は彼を孤独に追いやります。パイは自身の投影によって囚われてしまうのです。水瓶座(社会、サークル、グループのサイン)の土星は、パイを人との繋がりから遠ざけます。パイは自身の心理を探り、自身の恐れに向き合い、打ち勝たねばなりません。もしパイが単なる環境に順応した普通の人になろうと思うのなら、まず自分の性質を知り、自身に破壊的な衝動があることを経験する必要があるのです。土星はパイに自分自身のシャドウに対面するよう仕向けます。そうすることで後に、彼は幸せな人生を生きることができることでしょう。

パイとともに同じボートに乗っていたシマウマ、オラウータン、ハイエナ、そしてトラというこの4種の動物たちは、占星術における4つのエレメント、あるいはパイの精神の4つの要素に関連づけてみることができるでしょう。まず最初に食欲旺盛なハイエナに食べられて死んでしまうシマウマは、風、思考の要素と言えましょう。シマウマのように速く走る動物は水の上では生き長らえません。また、白と黒のストライプは、白か黒か、真偽の判断をし続けること、あるいは二重性を示しています。つまりパイは思考したり論じたりするのが好きですが、ここではそれはあまり役に立たないのです。ハイエナが土の要素の象徴とすると、パイの飢え切った食欲は、思考や論理(シマウマ)を貪り食ったのだと言えるでしょう。感情という要素は、子供を失ったオラウータンによって表現されています。ハイエナの食欲は、母親のセンチメンタルな感情を食い殺してしまいます。極限的な状況下での飢えによる食欲というのは、自己保存のための最も基本的な本能でしょう。

さて、明らかにトラは火の要素を表しており、火は直感力と生きる意思を表します。この悲劇の第一場面では、最も死に物狂いの衝動は飢えであり、感情や思考を支配するような実際的な食欲です。ハイエナは命を生き長らえるためにはどんなものでも食べることができます。しかし環境が悪化し、外界からの助けがやって来ないと知った時、パイは新しい視野で自分の置かれた状況を判断せねばならないと悟るのです。生き延びるために、持てる資力を駆使し、自ら使える道具を生み出さねばならないのです。そして直感は状況をコントロールすることを覚えていきます。そうして、覆いの下で眠っていたトラは、あとから突如として表に出て来て、存在を現すのです。パイは、この強い動物(パイ自身の火の要素)をどのように手なずけるかを、いよいよ学ばねばならなくなります。

これは、より下位にあって隠れていたものが、どのようにして表に暴かれていくのかという見事で明瞭なメタファーです。何が下位にある要素なのかについては、いろいろ考えがあるかもしれませんが、私が思うに、私たちはこの要素を抑圧し、軽視し、不適当に使いがちであるということです。パイの葛藤が、ヤン・マーテルの水瓶座の土星とオポジションの獅子座の月を表現しているという考えに戻るとすると、パイの火の要素は、あらゆる宗教を信仰したいという自己愛的なやり方や、両親から注目を得たいという無意識の欲求(次男でした)によく表れています。このベンガルトラにリチャード・パーカーという人間の名前がついているのは、この火と直感の要素を、パイの意識はちゃんと認識していたということでしょう。しかし一方では、このトラは飼い馴らされていない野生のままなのです。パイはトラから食われない術を学ばねばなりませんでしたし、境界線をしっかり設けなければなりませんでした。あるいは野獣を飼う方法を見つけねばならず、そうしてパイは卓越した釣り人となり、水をとらえる人となりました。パイは想像力を駆使し、ボート上の様々な道具や器具をどう使っていけるのかを学んだのです。何よりも、パイは信念に基づきどう生きるのかを見出し、どうしたら、どの瞬間にも(火と直感の要素の最も重要な側面)人生が与えてくれるユニークな機会をつかみ取ることができるのかを発見したのです。

それにしても、リチャード・パーカーはパイのシャドウなのでしょうか?いいえ、違います。水瓶座の土星こそが、真のシャドウなのです。船が難破する前から既に、パイの宗教への傾倒の仕方は、そもそもが知的であり、外に向いていました。パイが冒険する間、彼は直感によって導かれる知性をどのように使うかを学んだのです。パイの未熟さと社交性の欠落を補うために、土星はパイの水瓶座の風の要素を用いますが、それは意思の力によってのことです。パイが生き抜くために使うシステムは、水瓶座の論理性、支配力、革新力に基づいています。

この物語の最初の方に、アン・リー監督がみごとなやり方で盛り込んだ、鍵ともなる場面があります。どうやってトラが山羊を捕らえ、殺し、そして貪り食うのかを、パイの父親がパイに教えようとする時に、厳しくしつけるのですが、この場面は暴力的で残酷に描かれています。けれども、ここでのメッセージというのは「この肉食動物と一緒に仲良く会食するわけにはいかない。自然とは容赦ないものなのだ。」ということなのです。これは個人の健全な成長にとって必要な父親像の、とても明瞭な良い例です。パイの中に見てきた獅子座の月によって、パイはトラの麗しさにいとも容易に惹き付けられてしまい、危険がそこにあることを気づくことができなかったのです。子供はふつう、母親的で心安まるような生命への捉え方に引かれるものです。しかしながら、父親の役割というのは、安全なやり方で子供を母親の胸元から引き離すことにあるのです。父親からのしつけ(父親の権限はシャドウと結びつきがあります)は、結局はパイが命を生き長らえる助けとなるのです。

もうひとり主演の俳優も合わせて、これら三者のチャートをさらに読み深めたいところですが、ぼちぼち時間にも紙面にも余裕がなくなってきました。それにしてもいつものごとく、驚くようなシンクロニシティが起きていますね。小説家ヤン・マーテルは、水瓶座の土星を持っていますが、パイを演じた若きインドの俳優スラージ・シャルマ(1993年3月21日ニューデリー生まれ)は、同じく水瓶座の土星で、マーテルの土星と合なのです。アン・リーの土星は蠍座で、スラージの土星は蠍の冥王星とスクエアなので、リーの土星は、これら3つのチャートを総括しているように思えます。これがゆえに、リー監督はこの物語を映画化することができたのでしょう。そしてこの映画とは、安全と力の構造が崩れた時にどうしたら生き抜けるのか?という私たちが抱える21世紀の恐れを、純粋な黄金に変容させる完全なる錬金術的作品であるとも思うのです。いよいよ私たちは人生の奥義に参入せねばならない、その時がやって来ています。
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Suraj Sharma
born on March 21,1993,
New Delhi, India,
unknown time
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Ang Lee
born on Oct/23, 1954,
Pingtung, Taiwan,
unknown time

スラージ・シャルマは、完璧にパイのキャラクターを体現しました。スラージの牡羊座の太陽は、パイを戦士にさせ、それは開拓者にさせました。また、魚座の月と水星によって、スラージはこの映画制作中のほとんどの時間を実際の海の真ん中で過ごすこととなりました。海は集合的無意識をみごとに象徴するものなのです。(終)

パイの物語(上) (竹書房文庫)

ヤン・マーテル / 竹書房


パイの物語(下) (竹書房文庫)

ヤン・マーテル / 竹書房


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映画「ライフ・オブ・パイ」オフィシャルサイト
原文(英語)はコチラ
ライフ・オブ・パイ〜自分自身のシャドウの飼いならし方(1)

by xavier_astro | 2013-05-16 00:00 | 映画  

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