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大悪徳(悪習) 4(2)「バベットの晩餐会」〜神聖なる祝宴

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「バベットの晩餐」は、飲食と、料理という芸術による至福の体験を表現した、素晴らしい物語の一つです。これは「最後の晩餐」とは対照的なものです。バベットの料理は芸術であり、美徳です。すなわちそれは、大食とは対極にある美徳なのです。これまで触れてきた全ての要素がこの物語の中にあります。豪奢な晩餐会に村の人々が招かれます。木星的な側面もまた顕著に表現されていて、招待された12人の客人は共同体全体の代表です。飲食すること自体がその目的であったり、人生の意味するところのものの代わりになるのではなくて、バベットの作るご馳走は、食事を分かち合うことの喜びの大切さを伝えているのです。



この映画は、ガブリエル・アクセル監督(1918年4月18日デンマーク、オーフス生まれ)が、 デンマークの作家カレン・ブリクセン(ペンネーム、イサク・ディーネセンあるいはアイザック・ディネーセン/1885年4月17日午後4時、デンマーク、ラングステッド生まれ)の短編小説を、みごとに映画化したものです。この監督と作家は誕生日が一日違いで、両者とも太陽が牡羊座で、さらに同じ度数(牡羊座27°)にあります。作家と一体化することで、アクセルは原作の美しさと、多くの五感に響く詩的な表現を映像化しています。バベットの創り出す芸術の霊的な閃きを十分に堪能するためには、原作本も読んでみることをお勧めします。
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Gabriel Axel
Apr/18/1918
unknown time
in Arhus, Denmark

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Isak Dinesen
Apr/17/1885
at 4pm
in Rungsted, Denmark


この物語に出て来る木星のテーマを見ていくと、大変興味深いものがあります。バベットは2人の老姉妹のところを訪ねますが、2人にとってはまったく見知らぬ女性でした(木星はよそ者や異国人、客人を保護する)。彼女は1871年市民革命の後、パリ・コミューンから亡命して来たのです(木星は社会的運動に関係する)。彼女が辿り着いたのは、ノルウェー(映画ではデンマーク)のたいそう敬虔な信者の町で(社会や宗教は木星のテーマ)、その姉妹はかつて崇拝されていた牧師の娘でした(木星は聖職者を表す星座)。バベットは彼女たちのために、料理人として無給で働くことにしますが、それは12年(木星のサイクル)に渡りました。そして彼女は宝くじに当たるのです(木星は幸運の星)。姉妹が彼女たちの父親の生誕100周年を祝うと聞いた時、バベットは彼女たちに、お祝いの晩餐を作らせて欲しいと頼み、全ての費用を自分で支払います(祝い事は木星で、寛容さはこの惑星の重要なギフトです)。

カレン・ブリクセンは、これらの木星的なシンボルを、意図的に物語に織り込み、テーマを発展させたのでしょうか?それはまず無いでしょう。これが、真の芸術家が独自な方法を用いて、集合的なシンボルの様々な表現と自分自身とをどのようにして同調させうるか、その良い例です。彼女の出生図には、11室の獅子座に木星があり、他の天体とも角度をなしています。このような木星の配置から分かるように、彼女は寛容な女性で、高い道徳的、社会的価値観を持っていました(彼女はアフリカとその人々を愛し、ナチスのユダヤ人迫害から、何人かをかくまいました)。獅子座の配置が、彼女を独創的でドラマチックな語り手にしたのです。 

それでもやはり、カレン・ブリクセンはこの短編小説を書くにあたり、宗教的なシンボルを入れ込もうと考えていました。紀元一世紀頃の初期キリスト教において、執り行われていた愛の晩餐を参考にしたのです。キリストが弟子たちとともにした「最後の晩餐」は祝賀会であって、その食卓では物質的な食物とワインは、霊的な滋養に変容したのです。バベットの晩餐会では、12人のゲストがテーブルにつき(12人の弟子(十二使徒)を表します)、バベットが供するご馳走を食べるうちに、この厳格で重苦しい人々の雰囲気が、徐々に軽くなり、幸福感に包まれていきます。バベットの創る芸術について、あらゆる側面から理解することのできた唯一のゲストは、将軍であり、彼は、「ここに慈悲と真実が巡り逢い、高潔さと無上の幸福がキスを交わしたようだ」と言うのです。これらすべては木星のギフトです。

カレン・ブリクセンは、最後に、この晩餐が天の光に照らされているように描写しました。バベットの料理の芸術が、奇跡を起こしたのです。大食という大罪に向かわせることなく、愛によって用意され供された食物とワインは、愛を分かち合うという至上の喜びをもたらす天からのギフトとなったのです。バベットは、この共同体の禁欲的で悲しげな人々を不憫に思い、彼らを幸せにし、感謝という気持ちを体験してもらうことを決意したわけですが、これもまた木星のギフトといえるでしょう。彼女は宝くじで手に入れたお金を全て使い果たし、再び貧困となりますが、このお話の最後に、バベットはこう言うのです。「偉大な芸術家が貧くなることは決してない。(いつも豊かなのである)」

カレン・ブリクセンはキリスト教的なシンボルを使いましたが、それは彼女がその宗教的背景で育ったからです。本来、霊的エクスタシーに結びつく聖なる食物と飲物の象徴となされるのは、普遍的なものです。ギリシャ神話には、神々の宴会で、不老不死の食物であるネクタルアンブロシアを給仕する女神ヘーベーがいます。また、他の神話では、神々のワインの給仕役ともいえるガニュメーデースは、鷲の姿を借りたゼウスによってさらわれますが、この神隠しはまさに、私たちを天上へと昇華させる愛のエクスタシーそのものといえるでしょう。

将軍がこう言って、物語は終わります。
「友よ、神の恩寵は、我々に何かを要求することはない。我々は信頼してただそれを待ち、そして、感謝することで恩を返してゆくのだ。」(終)

原文(英語)はコチラ

バベットの晩餐会 HDマスター  [DVD]

紀伊國屋書店


バベットの晩餐会 (ちくま文庫)

イサク ディーネセン / 筑摩書房


by xavier_astro | 2012-04-15 00:00 | 心理  

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