ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ (1)

一年ほど前に、ジョン・レノンについてのコラムを書いたのを覚えているでしょうか?彼の人生とその悲劇的な死を、占星術的、ユング心理学的な視点から見ていきましたが、それは全て「マナ人格」のアーキタイプに関係していました。ある人物が、ユニバーサル・マザー、司祭、犠牲者というような集合的なアーキタイプを自己同一化する時、アイデンティティを喪失してしまうその危険性について言及しました。セレブリティやスター、ポップシンガーなどの場合には特に危険です。ジョンは彼の世代全体の感情を表現できるカリスマ的なミュージシャンであり作詞家であり、このエネルギーをチャネルしたことで彼は時代の象徴としてのアイコンとなりましたが、最終的にそのアイコンは、彼自身の崇拝者によって破壊されたというわけです。
 (参考)ジョン・レノン 真の「マナ人格」(1)
     ジョン・レノン 真の「マナ人格」(2)



2009年、英国の女性映画監督サム・テイラー=ウッドが、50年代のリバプールを舞台にジョン・レノンの思春期の危機を題材にした映画を製作しました。「ノーウェアボーイ」です。この作品はジョンの父親違いの妹の一人、ジュリア・ベアードの手記を脚色したものです。事実上、ジョンは両親に見捨てられ、実母の姉であるミミ伯母さんに育てられましたが、伯母さんはジョンに責任感のある生徒になって欲しいと考える厳しい人でした。しかしジョンが、恋人と2人の娘と共に、同じ街に住んでいる母親、ジュリアを見つけ出すのに、それほど時間はかかりませんでした。ジョンとジュリアは互いに会うようになり、陽気なジュリアは、ジョンにバンジョーの弾き方とロックンロールミュージックを手ほどきしました。しかし彼女はジョンを情緒的に支えるには、あまりにも不安定で無責任でした。この物語は、ジュリアが車に轢かれ、突然の死を迎えることで、結末を迎えます。そして、ジョンは学校をやめ、彼の音楽人生のスタートを切るのです。
 (註)原書 Imagine-This-Growing-Brother-Lennon/ by Julia Baird

これらの過去の出来事は、ジョンのクリエイティブな素質だけでなく、情緒的な問題をも活性化することとなりました。この映画監督は、ジョンの精神の中に2つの相反する側面があることによく気づいていました。それは奔放な性格の実母と厳格な伯母という、2人の姉妹の正反対の性格に由来するものであり、言ってみれば母親イメージが2つに引き裂かれているのです。ジョンは自分の音楽に対しては勤勉であり責任のある男でしたが、一方では、感情的に未成熟で気まぐれで、自分勝手で移り気な男でした。この分裂は彼のチャート(1940年10月9日18:30英国リバプール生まれ)の水瓶座の月のアスペクト(冥王星とオポジション、蠍座の水星とスクエア)から、見て取ることができます。またそれは彼の人生における代表的な2人の有名な女性、最初の妻であり犠牲者となったシンシア、そして支配的で派手な2番目の妻であるオノ・ヨーコを説明するものでもありました。

ユングは現実の異なるレベルで全ては相互につながり合っているという、シンクロニシティ(共時性)という概念を発展させました。私は、どんな出来事であれ、その出来事を取り巻いて存在するシンボル、あるいは(占星術であれば)惑星があるという、自然界の性質について、常に言い続けてきました。それゆえに、探求する時には、映画監督とキャスト全員のチャートと、ジョンと家族、もちろん回顧録を書いた妹も含めた全員のチャートとの間には、当然つながりがあるのです。また、個人のチャートはその人が亡くなった後でもなお活性化され続けるということを、私は確信しています。例えばこの映画がリリースされた2009年以降、ジョンのチャートにおける天王星、冥王星、土星のトランジットが非常に強くなっており、この映画の監督や俳優たちについても、同様に言うことできます。

ジョン、彼の母親、伯母、2人の妻のチャート、そして、この映画の監督と、ジョンとその家族を演じた俳優たちのチャートを比べることで、関係性にまつわる占星術研究の興味深い領域が見えてきます。これをシナストリー解析と呼びます。しかしながら、この映画監督サム・テイラー=ウッドが著名で影響力のある写真家であり、コンセプチュアル・アーティストであることを知った時、彼女自身の精神を通した視点からアプローチする方がより面白いかもしれないと思いました。ジョン・レノンのチャートは、どのようにしてサム自身のチャートに影響及ぼし、動機を与えたのでしょうか?2人は会ったこともなく、まったく違う世代に生きたのにもかかわらず、ジョンとサムを繋げたものはなんだったのでしょうか?

サム・テイラー=ウッドは1967年3月4日ロンドン(時間不明)に生まれました。彼女はこの脚本を監督するように選ばれましたが、それまで長編映画は監督したことがなく専門外だったのです。ジョンは誰もが知る有名人であり、彼の人生や行動を知る多くの専門家が世界中にいることは明白でした。それで彼女は不安に駆られ、申し出を断ろうかどうかと迷っていた時、車を運転していると、突然ジョンの歌がラジオから流れてきたのです。彼女にとって、それはこの挑戦を受け入れるというサインとなりました。

サムのチャートは、魚座の太陽に乙女座の冥王星、天王星のオポジション、そこに射手座の月がスクエアしていて、この頃、彼女は人生において非常に重要な局面を迎えていました。このTスクエアは、彼女の感情(月)、アイデンティティー(太陽)、そして創造力と変容し続けることへの必要性(水星、天王星、冥王星)が絡んでおり、ここに、乙女座入りした土星のトランジットが揺さぶりをかけていたのです。彼女の写真やコンセプチュアル・ビデオを見ると、彼女のパターンを壊し、新しいヴィジョンを創造することへの強い欲求が、どのようにして、彼女を、非常に危険なプロジェクトに関わらせ、誰も探求したことのない(天王星、水星のオポ)ような領域へと駆り立てていったのか、ということが理解できます。

繊細な魚座の気質と、革新的で知的なコンセプト(乙女座の天王星)を組み合わせることができるサムの能力の明確な例として、彼女の写真作品「クライング・マン」のシリーズをあげられるでしょう。この作品は、最も偶像視されるような著名なハリウッドの俳優たちが、カメラの前で泣いているポートレイトの作品集です。ショーン・ペンや、ローレンス・フィッシュバーンダニエル・クレイグなどの多くの俳優たちで、いつもは力強さを連想させる、アクション映画の勇敢な男たちがこの作品では泣いており、弱さをさらされ、傷つきやすさを見せているのです。そのイメージはある種のショックと好奇心を生み出し、ある意味で気まずさを感じるような、何か非常に深遠なものと同時に親密さを生み出しています。この作品はピカソ泣く女のモチーフに触発されたものだそうです。(続く)


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John Lennon
born on Oct/09/1940
at 18:00
in Liverpool, UK

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Sam Taylor-Wood
born on March/4th/1967
in London, UK


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映画「ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ」 公式サイト

原文(英語)はコチラ
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by xavier_astro | 2011-06-02 00:00 | 映画  

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