報復の女神ネメシスとアリストテレス・オナシスの生涯(1)

ネメシスは、ギリシャ神話に登場する報復の女神で、人間の不服従や高慢さそして思い上がりに対する神罰を与えるのです。今回は、神であるかのようにふるまった一人の男アリストテレス・オナシスの話をしたいと思います。

最近のことですが、BBCのインタヴューに答えるイギリスの俳優ロバート・リンゼイのコメントに、私は当惑しました。彼はピーター・エバンスの原作「ネメシス」にほぼ忠実に基づいたマーティン・シャーマンによる演劇「オナシス」の宣伝をしていました。この演劇は、ロンドンのノヴェロ劇場(劇場街ウエストエンドにあったストランド劇場から改名)で、今も上演されています。すぐに観に行くことが出来なかった私は、とにかくすぐにその本を手に入れました。実は東京のブックオフですでにその本を見てはいたのですが、その時はそれ程驚くべき真相を語ってるものとは思いもしませんでした。この本は非常にダークな話ではあるけれど、小説として読むことができます。

Nemesis: The True Story of Aristotle Onassis, Jackie O, and the Love Triangle That Brought Down the

Peter Evans / Harper Paperbacks





マーティン・シャーマンの殆どの演劇は映画化されてきたので、この作品もその過激な内容が論争を呼ぶものであれ、きっとすぐに映画化されることと思います。その醜聞にも関わらず、アリ(アリストテレス)・オナシスはアメリカの市民にとって成功と羨望の象徴であり、その妻、ジャクリーン・ケネディ・オナシスは、前夫ジョン・F・ケネディが暗殺された後も、悪から自分の子どもを守る勇敢な若い未亡人としてのイメージを常に持ち続けていました。ピーター・エヴァンスがそのイメージを打ち砕くこととなったのです。

ラジオのインタヴューの中でロバート・リンゼイは、その演劇について、また1人の芸術家としての決断のその背後の道徳的信念について熱く語っていました。リンゼイは、アリストテレス・オナシスの生涯とケネディ一族に関するピーター・エヴァンスの著述を読んだ後に、オナシス役を演じることを決意しました。ある者は個人のバウンダリー(境界線)を尊重することなく、一般人の常識を大きく逸脱し、政治家や警察を買収し、他人さえも買うことが出来るのだと、リンゼイは語っていました。私は後で知ったことですが、リンゼイは、何が正しく何が不正であるかに重きを置く典型的な射手座だったのです。ハリウッドの商業主義の喧騒から遠く離れたこのイギリスの俳優にとって、この演劇を演じることは、権力のダークサイドを露にし、その不正を暴くことのできるいいチャンスだったのです。

実際、そのピーター・エヴァンスの本「ネメシス」に書かれているのは、唖然とさせるような暴露話です。アリストテレス・オナシスは、アラブ人テロリストに自分のオイルタンカーの警護のために金を払い、またサーハン・サーハンというパレスチナ人に、ロバート・ケネディ暗殺のための金、200万ドルを支払ったということです。このギリシア人大物実業家オナシスはボブ(ロバート)・ケネディーを憎んでいました。ボブはオナシスが再び米国で商売することを禁じ、それに加え、オナシスと自分の暗殺された実兄の未亡人ジャクリーンとの恋愛関係を壊すのに全力を尽くしていました。もしボブが米国大統領に当選していたら、二人の結婚は決して許されることは無かったでしょう。その他にも、オナシスの権力と金への強欲や、平然と何百もの鯨を殺す冷酷さと殺しへの渇望、政府や官僚を腐敗させる方法などを暴露しています。元大統領夫人のジャクリーンに関して言えば、この億万長者オナシスの元恋人であり、実の妹であるリー・ラジヴィルからオナシスを奪い取りました。

これは単なるゴシップではなく、 これ以前に「アリ」(オナシスの自叙伝;1986年)(※)を出版していた、英国のジャーナリストピーター・エヴァンスはその本を書くために何年も費やし、オナシスの友人や家族、元CIA捜査員らにまでインタビューしました。死の間際にあったオナシスの実の娘クリスティーナ始め、彼の長年のビジネスパートナーヤニス・ゲオルガキスからの証言もありました。その中には幾つかの逸話と、また幾つかの証言が語られていますが、全て確証が得られているものなのです。名誉毀損で訴えられる危険性が非常の大きかったので、エヴァンスは慎重にならねばなりませんでしたが、私の知る限りでは、誰もまだその情報についての反論を公に唱えてる者はいません。

(※)和訳本「オナシスの生涯―欲しいものはすべて手に入れた男-新潮文庫-ピーター-エヴァンス

俳優ロバート・リンゼイを惹きつけたのは、オナシスの政治、経済そして情事において企てたダークな陰謀で、主にその道徳的スキャンダルに関するものでした。しかし、私が最も心惹かれたのは、この男と彼の家族と彼と接触のあった人々全てを通じて出る、アーキタイプの現れ方です。私はこの物語の悲劇的側面に感嘆するのです。悲劇とは人間の境遇について学ぶための最も素晴らしい様式だと思います。

オナシスは山羊座で、小アジアのギリシャ都市スミルナ、後にトルコの侵略によってイズミルとなった都市に生まれました。1906年1月20日生まれで時間は分かりません(※)。アセンダントは分かりませんが、幾つかの天体が、具体的で物質的安全の土のサインにあることが見て取れます。このチャートは、働き者で非常の野心的な男であることを示すものであり、山羊座の太陽・金星のコンジャンクションが、彼を有能で魅惑的な人物にしています。彼の悪行を耳にしつつも、多くの友人が彼のことを好いていました。また別の土のサインである牡牛座の木星は、彼の太陽・金星と角度をなすことで、彼のカリスマ性を倍加させ、そしてもちろん木星は彼のチャートの中の幸運を担い、富と大事業へのヴィジョンに一役買っています。

彼のチャートにおける木星的な質は、射手座の月によって強められ発展していきました。この非常に火的要素の強い月は木星とのオポジションによって強烈に活性化されたのです。彼の無意識、女性性の側面を表す月は、彼の人生における第二の性質として表現されたと言うことができるでしょう。

射手座はオデュッセウスの神話と関連します。機知に富み、幸運の持ち主で、冒険好きな英雄であるホメロスの叙事詩イーリアド(イーリアス)の主人公の話です。オナシスはかつて、それが自分にとって現実の神話であると、自分自身をオデュッセウスと同一視していました。しかしオナシスは、私たち多くの者と同様に、自分の行為や悪行を正当化するための理想像を持っていました。この点、私は彼に賛同はしません。実際、彼はその木星的な仮面の後ろに自分の本当の性質を隠していたからです。魚座にある彼の支配惑星の土星が、最終的には、彼にその過ちの償いをさせることになります。オナシスは彼の最も大切にしていた自慢の一人息子アレキサンダーを飛行機事故で亡くしました。オナシスは息子を亡くした後、ほんの数年しか、生き長らえませんでした。オナシスはオデュッセウスと同様に旅人でした。世界中に豪華な邸宅を持ってはいましたが、ペネロペ(オデュッセウスの妻)の夫とは違って、とうとう家に帰ることなく、ずっと流浪を続けたのです。オデュッセウスの神話が彼の人生において再現されたわけですが、しかしそれは破壊的なやり方で起きたのです。(続く)

e0182773_18513973.gif
アリストテレス・オナシス
1906年1月20日(時刻不明)
トルコ イズミル生まれ





※バースデータはWikipediaでは1月15日となっているが、ザビエはピーターエヴァンスの本に記述のものを使用。


原文(英語)はコチラ

Ari: The Life and Times of Aristotle Socrates Onassis

Peter Evans / Summit Books

オナシスの生涯―欲しいものはすべて手に入れた男 (新潮文庫)

ピーター エヴァンス / 新潮社


[PR]

by xavier_astro | 2011-01-04 00:00 | 人物  

<< NEMESIS, THE LI... NEMESIS, THE LI... >>