ブラピとアンジー『ブランジェリーナ』 アーキタイプとステレオタイプ

映画評論家としての私は、映画に関する記事を執筆する際、俳優や映画監督の私生活には触れないようにしています。有名人の私生活は、伝記などを書く時を除けば、最終的に商品として提供される映画や舞台とは無関係です。映画などで演じる役柄と同様、社会に見せているペルソナ(仮面)は、俳優の実際の人生とは違うものですし、アーティストや有名人達の情事や性的指向も、単なる個人的なことだと言えましょう。例えば、妻に対してひどい扱いをしたローレンス・オリヴィエ男爵(1907.5.22 俳優・映画監督)が、同性愛者であろうとアルコール依存症であろうと、「ハムレット」を監督し「リア王」を演じる才能に何か影響が及ぶわけではありません。



しかし、シンボルとユング心理学のカウンセラーであり研究家でもある私は、概して、世間と著名人、あるいは観客と俳優・映画監督・作家・アーティストの間に働く相互作用に魅了されます。全体を俯瞰して捉え、そして有名人と一般人の間を流れるエネルギーの交換と循環という視座を持って、この文化的事象を理解するのが重要でしょう。これはつまり、お互いに引きつけ合う現象なのです。

有名人は誰もが皆、大衆の目にさらされています。アーキタイプは、著名人(アーティスト、有名人)や、表現のテーマ(特性、芸術的解釈)、メッセージを受け取る聴衆(民衆)と結びついています。

では、2人のハリウッドスターの離婚について、マスメディアが伝えているスキャンダルを見てみましょう。彼らは今回のテーマを説明する事例としてうってつけだと言えましょう。彼らは有名で、才能豊かで、創造的で、熱心な人道主義者です。さらに、美男美女であり、全てを兼ね備えた完璧な夫婦であり、完璧な親にも思えます。幸せな結婚がなお続いている、ハリウッド界最後の理想の夫婦だったとも言われています。ブラッド・ピットアンジェリーナ・ジョリーです。彼らは、2つの違ったコンセプトの強力な繋がりを表現する混成語(※)『ブランジェリーナ』と、メディアが呼ぶにふさわしいと思われていました。(※例 「ブレグジット(Brexit)」 Britain(英国)とExit(退出する)を組み合わせた造語で英国のEU離脱の意味)

Starという言葉は、ハリウッドのスターシステムの始まりと共に営利目的に使われた出したわけですが、人間界の上にある天界に住まう神々の、元型的なイメージにまさにぴったりだと思います。

ブラッド・ピット(1963.12.18 am6:31 Shawnee OK)と、アンジェリーナ・ジョリー(1975.6.4 am9:09 Los Angeles CA)のチャートには、ハリウッドスターである2人の確固とした深い絆がはっきりと示されており、2人にとっては深い絆が、最善にも最悪にも機能しています。私達の素質は、他者との繋がりが深くなればなるほど、極端に活性化されます。なぜならアーキタイプ(元型)は、ただダイナミックに表現されうるものだからです。私たちは、光の側面だけで生きると選択することはできません。闇の側面を否定するとなると、アーキタイプ(元型)をぺしゃんこにつぶしてしまうことになるからです。つぶされたアーキタイプは、ステレオタイプとなり、危険な状態に陥ります。なぜなら、アーキタイプ(元型)は、平坦につぶれてしまうほどに、過激さを増して表現されてしまうからです。

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Brad Pitt
Dec 18, 1963
at 6:31a.m.
in Shawnee OK

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Angelina Jolie
Jun 4, 1975
at 9:09 a.m.
in Los Angeles CA


ギリシャ語で「Stereos」は、硬い、硬直した、という意味です。ですから、ステレオタイプは、決して変化することのない刻印、もしくは型といえます。一方、アーキタイプ(元型)はダイナミックで、新しい刻印を絶え間なく創り続けることができます。商業的に作られたハリウッド映画は、ステレオタイプ的に作られています。例えば、善良な男性が美しい女性に恋をし、悪役の男性が横恋慕する。しかし、最後にはすべてが丸く収まりハッピーエンド、というようなものです。芸術的な作品や「ツリー・オブ・ライフ(The Tree of Life)」(テレンス・マリック監督、脚本。2011年、米)のような素晴らしい映画は、深い真実を表現するためにアーキタイプ(元型)を使っていて、この映画を見るたびに、いつも新しい意味を発見する自分がいるのです。
新しい意味を生み出すアーキタイプ(元型)の潜在的な力は、尽きることがありません。一方、ステレオタイプは、一般的には、ただミイラのように干からびて何も生み出さず固まってしまうイメージがあるのです。

ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの二人は、質の悪いステレオタイプ的な映画を作ってきましたが(二人の関係性はその中の一本の映画から始まりました)、アメリカで最高の映画監督と仕事をした、才能豊かで知性的な俳優であると評されました。アンジェリーナ・ジョリーは、クリント・イーストウッド監督(彼女と同じ双子座太陽)と、ブラッド・ピットはテレンス・マリック監督(彼と同じ射手座太陽)と仕事をしました。二人の俳優は常に、異なる芸術性を持ち、それぞれに人道主義運動と政治的運動に傾倒していました。アンジェリーナ・ジョリーは、多方面に才能を発揮する、典型的な双子座の優秀な映画監督でした。一方、ブラッド・ピットは、知性的な映画監督でした。

ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの太陽星座である射手座と双子座は、正反対の質を持つため、対立関係にあると同時に、お互いを補い合うこともできました。ほとんどの夫婦は、彼らのようにお互いを補完し合う関係を持つ傾向があります。正反対の星座に位置する太陽は、お互いの無意識を活性化させ、内的統合のプロセスを促進します。しかし、そのプロセスによって引き受けなければならないことは、関係性が持つ矛盾に立ち向かうことと、感情的な対立や葛藤に向き合うことだと言えるでしょう。あまりに強いエゴを持つ場合に問題となるテーマは、この夫婦同様、両者の権力争いなのです。

ホロスコープを見てみると、この夫婦は、木星のレベルでは、似たような価値観を分かち合うことができるのでうまく機能します。正義と寛容さの天体である木星を牡羊座に持ち、人権、子供、正義のために戦うことを良しとします。彼らがマスメディアに見せるペルソナ(仮面)は、子供達への救済と結びついており、彼らは自分達自身の子供と、様々な国から来た養子の子供達と、ある種の木星的家族を作りました。このように、ブランジェリーナは、様々な人種の愛すべき子供達と、素晴らしい国際色豊かな家族を作ったというイメージを見事に植え付けているのです。

しかし、この夫婦の月を見ると、彼女の月は牡羊座に、彼は山羊座にあり、日常生活での家庭のレベルでは、何かぎくしゃくしていることがわかります。アンジェリーナ・ジョリーの牡羊座の月は9室にあり、あまりに誇大妄想的で、理想や大義名分のために戦い続けることを必要とします。しかしブラッド・ピットの山羊座の月は、心の平穏と安全を必要とします。つまり、ブラッド・ピットは射手座の夫としては、アンジェリーナ・ジョリーの国際的家族という理想を分かち合うことはできても、彼の月は戦いによって日常の平穏を邪されるのは我慢ならないのです。

アンジェリーナ・ジョリーは、子供達の権利のために戦っているだけで、それが自分自身を守っていると確信しています。しかしおもしろいことに、夫であるブラッド・ピットの方が、妻が抱える怒りを無意識のうちに行動で表現しているのです。双子座のアンジェリーナ・ジョリーは、意識を分裂させることで、自分は正しいことをしているという確信を持ち続けました。しかし、彼女の夫は、まもなく元夫になるのでしょうが、何年もの間、素晴らしき国際連合家族という幻想に従う努力を続けてきたに違いなく、無意識では、うんざりしていたのでしょう。

ブラッド・ピットは聖人などではありません。それどころか、カリスマ性があり王子様のようにチャーミングなペルソナ(仮面)の背後にあるのは、安全のエリアである2室山羊座の月が象徴するように、いつもの決まった日課がある安全な生活を必要とする実直な男性なのです。この、寛容で、冒険心に富む、心の広い射手座の夫が望んでいたのは、安定して落ち着いた、家族との生活だけだったのです。そして、家族の前では自己中心的な振る舞いをしたに違いありません。これでは、アンジェリーナ・ジョリーの素晴らしくも開かれた理想の家族とは、そりが合わないのでしょう。地のエレメントの月と、火のエレメントの月のコンビネーションでは、日常生活の面でうまくやっていくのは難しいのでしょう。

しかしながら、この種の夢や理想を持つこと自体、何も間違っていません。問題は、アンジェリーナ・ジョリーが、機能不全だった家庭に育った子供時代の埋め合わせをしている点にあるのです。彼女の無意識下には、理想の家族を求め続けることを止められない感情があるのでしょう。そして仮に、求め続けることを止めてしまったら、彼女の中にある暗闇のような冥王星的感情が(彼女の月は冥王星とオポジション、土星とスクエア)、自身と愛する人々を破壊してしまうと無意識下で感じているのでしょう。

今、彼らはまさに危機的状況にさしかかっています。なぜならば、自らの進化を引き起こすためにチャートの中のアーキタイプ(元型)が、内在する闇の側面を表現しているからです。ブランジェリーナは、完璧なハリウッドのペルソナ(仮面)のステレオタイプを引き剥がし、捨て去る必要があるでしょう。しかし、ここで大きく進化するために、お互いのエゴとシャドウ(心の中にある影の部分)を見つめる必要がありますが、恐らく、彼らはそれを望んではいないのでしょう。しかしながら、2人にはこの危機を乗り越える潜在的な力が十分にあると、私には思えるのです。(終)

翻訳:八田直美

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BRANGELINA, ARCHETYPES AND STEREOTYPES

As a film critic I avoid making any mention about the private life of actors or film directors when I write an article; unless you are writing a serious biography, the intimate life of famous people is irrelevant to the final product, the movie or the staged play. The character an actor plays as well as his or her social persona is different from his or her real life; artists or celebrities’ love affaires or sexual orientation concerns only themselves. Whether Sir Lawrence Olivier abused his wife, was bisexual or alcoholic, added nothing to his genius to direct Hamlet or to perform King Lear.

But as a counsellor and researcher of symbols and Jungian psychology, I am fascinated by the interaction between society and celebrities, audience and actors, directors, writers or artists in general. The main rule to investigate this cultural phenomenon is to perceive it as a whole, as a cycle of exchange of energy between the famous people and the normal people; it is a mutual appeal.
There are no celebrities without public eyes. The archetype connects the famous person (artist or celebrity), the theme of expression (the character or the artistic construction) and the public who receives the message.

Let us explore a scandal in the media about the divorce of two Hollywood stars; they are perfect to illustrate our point; famous, very talented, creative and involved in humanitarian causes; they are beautiful and they seemed a perfect couple and perfect parents. Some say that they were the last Hollywood ideal couple living a wonderful marriage. Brad Pitt and Angelina Jolie were supposed to match so well that the media called them Brangelina, a portmanteau word to express the strong link of two different concepts (like Brexit).

Although used for commercial purposes in the beginning of the Star System, the word Star suits very well the archetypal image of gods living above the human condition.

The charts of Brad Pitt (Dec 18, 1963 at 6:31am in Shawnee OK, and Angelina Jolie (Jun 4, 1975 at 9:09 in Los Angeles CA., confirm the deep connection of these two Hollywood stars. And deep connections work for the best and for the worst. The more we are connected with someone, the more our extreme tendencies are activated; archetypes can only be expressed in dynamic ways. We cannot choose to live only the bright side; when we deny the other side, we flatten the archetype, and then it becomes a stereotype. And this is dangerous because the more with flatten the archetype the more radical it becomes.

Stereos in Greek means solid, or rigid, so stereotype is an impression or a model (type) that never changes; archetypes are dynamic, it’s a model that produces endlessly new impressions. Commercial Hollywood movies are made with stereotypes; for example, the good guy loves the nice girl, the bad guy gets on their way, but finally all ends well. A work of art, a great movie such as The Tree of Life (Malick), uses archetypes to express deep trues; every time I see this film I discover new meanings. Archetypes capacity to produce new meanings is inexhaustible; stereotypes are common places, only mummified images.

Although both Brad Pitt and Angelina have made some bad and stereotyped movies (they started their relationship with one of those), they are talented and intelligent actors who have worked for some of the best film directors in America. Angelina with Clint Eastwood (a Gemini like her), Brad Pitt with Terrence Malick (a Sagittarius like him). These two actors have always been involved in different artistic, humanitarian and political causes; Angelina is herself a good film director, a typical versatile Gemini, and Brad Pitt is an intelligent film producer.

Brad Pitt’s and Angelina Jolie’s sings, Sagittarius and Gemini, are opposed but can be complementary; most couples tend to associate themselves in this way, the opposition of sings activates each other’s psyche and promotes a process of integration in each other. But this requires accepting the challenge of contradictions and emotional confrontations; when the ego structure is too rigid, as such is the case with this couple, the issue is a struggle of power.

This couple works well at the Jupiter level as they share similar values; each one of them has Jupiter, the planet of justice and generosity, in Aries; both fight for human rights, children and justice. Their media persona is associated with helping children. They have built a sort of Jupiter family with children of their own and adopted children from different countries. Thus Brangelina managed to give this impression of a wonderful international family with lovely children of different races.

But when we see their Moons, hers in Aries and his in Capricorn, we know that something is not working at the domestic level in everyday life; Angelina’s Moon in Aries in the IX House is too expansive, it needs to keep fighting for a cause; Brad Pitt’s Moon in Capricorn needs peace and safety. As a Sagittarius, Brad Pitt can share Angelina’s ideal of an international family, but his Moon hates to be disturbed with fighting.

Angelina is convinced that she is only fighting for children’s rights and that she is protecting her own; but the funny thing is that Brad Pitt is acting out, unconsciously, his wife’s own anger. As a Gemini she can dissociate herself and remain convinced that she is the righteous one; but her husband, soon to be ex husband, must have tried to comply with her fancies about a wonderful UN family for several years; unconsciously he must be quite fed up.

It is not that Brad Pitt is a saint, but behind his charisma and prince charming persona, he is a simple guy who needs a safe life with routines, Moon in Capricorn in the II House (area of security). This generous, adventurous and expansive Sagittarius only wants a stable family life, and at the domestic level his must be selfish; this does not go well with Angelina’s ideal of a wonderful and open family. The combination of a Moon in earth with a Moon in fire can be hard to deal with in terms of everyday life.

And there is nothing wrong with having this kind of dream and ideals, the problem is that Angelina is compensating her own childhood in a dysfunctional family; she, unconsciously feels that she cannot stop looking for an ideal family, otherwise the dark plutonian emotions (her Moon opposes Pluto and squares Saturn) can destroy her and the people she loves.

So, their situation is critical at this moment because the archetypes of their charts are expressing their dark side to provoke a movement of evolution; Brangelina needs to get rid of the stereotype of the perfect Hollywood persona; but this big jump requires facing each other’s Ego and Shadow, and maybe they do not want to, though they have the potential for that.(the end)
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by Xavier_Astro | 2016-12-01 00:00 | 人物  

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