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現代の英雄〜世紀の巨額損失を出したトレーダー、ジェローム・ケルビエル

ソシエテ・ジェネラルの不祥事といえば、このフランス大手銀行が、不正取引によっておよそ49億ユーロの損失をたった1人で出した所属トレーダーのジェローム・ケルビエルを告発することで、ニュースとなりました。私はこの事件をずっと追い続けてきたのですが、最も興味をそそられたのは、このフランス人トレーダーが、一銭も着服していないという事実でした。彼はただ不正取引をしたというだけだったのです。ソシエテ・ジェネラルはこの取引は違法であるとしましたが、ケルビエルは上司がこのことを知っていたことを指摘し、銀行に巨額を儲けさせてた時には、彼らはなんら文句を言わなかったと、主張しました。



事の始まりは2008年1月24日のことで、この年は、周知のとおり、世界金融危機の年となりました。このことで、私にとっても、フランスにいてケルビエルを支持していた多くの人にとっても、公の注意を逸らし、世の批判から隠すという目的のために利用されたのがソシエテ・ジェネラルであり、そのスケープゴートとなったのがジェローム・ケルビエルであることが明白なこととなったのです。そもそもケルビエルは会社にとって良い結果を残すこと、そして報酬を取れるようになることだけを考えるようなまじめな男でした。彼は、巨大な金融機関を相手に独りで闘ってきたのだと言えましょう。

多くの人々の人生を破滅に追いやったバーナード・L・マドフの事件という、もうひとつの金融界の不祥事が、同じ年にあったわけですが、ケルビエルのケースが、これらの犯罪や詐欺事件とは全く異質のものであることは明らかです。ケルビエルは1977年1月11日16:20 仏ブルターニュのポン=ラベに生まれました。私も山羊座生まれなので、同じ山羊座である彼の身の上に起きて来るドラマを、ごく自然に自分自身と関連づけて考えることができるのです。私は経済のことは全くの門外漢ですから、金融取引という見地からではなく、山羊座の観点で観ていった時に、責任を全うするということにどれだけ重きをおくか、責任を全うせねばならないという強迫観念が自分自身に向けられ、自己破壊に至らしめるという過程がどういうふうに起きて来るのか、などについては理解することができるのです。
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Jerome Kerviel
born on Jan/11,1977
at 16:20hrs
in Pont l’Abbe, France


それから6年(まもなく土星がスクエアになる期間です)、ケルビエルは敵を相手にしつつ、なんとか生き延びてきました。法律上の手続きを全て切り抜けて、弁護士を3度替え、自身が体験したことを本にして出版することさえやりました。ケルビエルは収入も貯蓄もなしに生きていかねばならないのです。引越しを何度もして、時には数ヶ月も車庫で過ごさねばならないこともありました。もちろん、彼のプライベートライフは、ズタボロで、多くの友達が彼の元を去り、恋人との関係性もダメになり、家族にも影響が及ぶこととなり、彼を経済的に援助していた母親も、今となっては重い病いに倒れ闘病中です。

ケルビエルはアセンダントが蟹座なので、メディアに狙われ、攻撃され、関わりを持たされるようなことは、彼にとってはかなりのストレスなことで、母親まで病気になってしまったことには相当ダメージを受けているのに違いありません。

最終的に、フランス最高裁判所(破毀院=Cour de cassation)が下した判決は、懲役5年の刑に処すというものでした。フランス警察に勾留され、刑務所に連れて行かれる前に、ケルビエルは突如として、ローマ法王に拝謁しにバチカンへ行き、そこから徒歩でフランスに戻って来た時、人々は仰天しました。私はこの話を聞いて、つい笑いが出てしまったのですが、それは、山羊座のケルビエルがこの聖地巡礼という行動をとった理由が、同じ山羊座である私にはよく理解できたからなのです。この行為は決して世の人に対する見世物というわけでは決してないのです。

12星座はそれぞれに、英雄たり得る資質を持っています。山羊座の場合は、聖なる山に登り、神に自分自身を捧げねばならないのです。ヘラクレスは命じられた12の仕事をこなした後、山に登りました。キリスト教においては、イエス・キリストは、ゴルゴダの丘に十字架を担いで登り、そしてはりつけにされました。ケルビエルは、知性的で賢い人物で、マネートレーディングと金融に長けていましたが、確かに洗練された知識人の家庭の出ではありませんでした。中流クラスの出身で、伝統的カトリック教徒の家庭に育ったので、彼自身もキリスト教に根ざしていたわけです。山羊座の支配星である土星(責任感)がアイデンティティを意味する獅子座にあります。人生において為すべきことは、本当の自分を発見すること、そして自分を超えるものに自身を投じることだと信じていたのです。これはいささかドラマティック(獅子座の資質)ですね。ちょっとやり過ぎ(歩き過ぎ)な感じがします。(3室の土星)

ケルビエルがローマからフランスへの徒歩帰還したのには、現実的な理由がありました。山羊座の人なら分かると思いますが、そのわけというのは、窮屈な刑務所の独房で何年も過ごさねばならないということは、歩く機会も殆どないであろう、ならば、山越え谷越え空の下、何日もかけて、歩きたい、と、ケルビエルはきっとそう思ったのです。そして、彼は今、この体験を選択したことに満足し、懐かしんでいるに違いありません。

ケルビエルの母親は美容師(月が調和と美の双子座にある)で、父親は鉄工員でした。田舎の一家庭でなんの目覚ましいこともないような田舎の家庭環境でした。ケルビエルは生来野心家で、勉学によく励み、そしてよい職を見つけ、その環境を最大限に活かして成功を収めたのです。彼は本当によく働きました。同僚は、彼は滅多に休みを取らなかったと言っています。彼の給料は、月に2,300ユーロ、年にボーナス込みでたった60,000ユーロで、高額の給料を取っていたわけではないのです。けれども、ケルビエルが英雄となることを集合無意識は、望んだようです。なにか事件が起きると、よほど平凡な生い立ちを持つ人物の方が、大きく採り上げられ、神話的な扱いを受けるということが起きてきますね。

ケルビエルの出生図は極めて金星的と言えます。金星は高い位置の魚座にあって、しかもMCに乗っかっています。また、金星は彼の月がある天秤座の支配星であることからも、彼は魅力的な人物に違いありません。天秤座は金融業に極めて向いている性質を持っています。6室(仕事)にある海王星は、魚座と金星に関係があります。禁固刑を受けるというのは、12室(牢獄の室)の支配惑星に起因していると言えます。しかし、それは精神性を求めていく旅路となることは間違いないでしょう。

天秤座の室である7室に山羊座の水星と火星があり、冥王星の室である8室のカスプに太陽が乗っているので、鉄工員である父親の鉄(火星を支配する金属)を扱うエネルギーを意味し、即ちそれは変容させる力を意味しています。英雄として、ケルビエルはビーナス(美の神)とヘパイストス(炎と鍛冶の神)の息子であるということができます。ゆえに、ケルビエルは地獄(冥王星の室)に行くことで、彼の人生における何か美しいものを創造するというプロセスを踏まねばならなかったのです。個人的に私は、聖人ではないにせよ、ケルビエル彼こそが真の英雄だと思うのです。英雄というのは時に傲慢になり、ひどい過ちを犯す可能性もありますが、ケルビエルの場合は能力に長けていたがゆえに自信過剰になってしまった結果のことでしょう。彼はよもや自分が、身勝手で権力があり、ゆくゆく彼を利用し陥れるような連中を相手にしているとは想像だにしなかったのだと思います。(終)

原文(英語)はコチラ

by xavier_astro | 2014-08-02 00:00 | 人物  

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