恥と罪 〜ジョセフ・コンラッドの人生と物語〜 (1)

シェイクスピアのリア王と恥についての文章をまとめている間に、ジョセフ・コンラッドの人生とその作品が私の心ににわかに蘇ってきました。ジョセフ・コンラッドはポーランドに生まれ、後に英国に帰化した偉大な作家で、十代の頃、しばらくの間、夢中になっていたことがあり、ある意味、私の青春時代の心の師とでもいうような存在の作家でした。彼の小説や短編集を通じて、この世の果ての異国情緒あふれる土地を知りましたし、海に関する専門用語や、破壊的な嵐や難破船のことを知りました。コンラッドの描く魅惑的だけれどもダークな登場人物たちや、社会からまさに追放された者たちの激しい人生に夢中になったものです。



コンラッドの作品中で、とりわけ多く描かれていたのは、祖国や家族から追いやられ、身寄りがなく、多くの人々の狭間で孤独に生きねばならない男たちの生き様でした。これらの男たちが、危険な冒険の中で敵に遭遇していくのですが、彼ら自身こそが、彼らの最悪の敵なのでした。これらの小説を読む時、私は、自分自身が自らの最悪の敵になり得るのだという、人生における最も厳しい現実のひとつを消化していかねばなりませんでした。コンラッドの物語では、主人公が自分自身のシャドウを認める時に山場を迎えます。そうして私は、私たちが自分自身のシャドウと向き合い、受け容れる勇気を持つ時こそ、自己嫌悪や恐れ、恥や罪の意識を超えることができるのだと学んだのです。以来ずっと、この学びを私は肝に銘じてきており、このことはカウンセラーとしての私をこれまでずっと導いてくれました。

確かに、コンラッドの登場人物ついていえば、恥の意識を超えていくのには、ハートと不屈の精神が必要となり、自らに直面した結果、死に至るという結末もあります。けれども、実際の人生において、私たちは自分自身の深い変容を受け容れるために、あるいは自身のアイデンティティーを理解し、表現するために、そこまでする必要はないのです。古代アテネの時代の文学や芸術の一つのジャンルとしての「悲劇」が、西洋のその近代初期に再び見出されたのが、唯一、エリザベス王朝時代のイギリス(シェイクスピアやマーロウの時代)、あるいは、ルイ14世時代のフランス(ジャン・ラシーヌの時代)でしかなかったとしても、「悲劇」の構成要素は、19、20世紀の作家たちによって受け継がれてきたのです。コンラッドの話の多くは、恐怖と哀れみが主題で、必要不可欠な要素でしたが、それは、アリストテレスによるところの、観客(読者)にカタルシス(感情の解放や浄化)を起こさせるためのものだったのです。

コンラッドのいくつかのエッセイや伝記を、私のキンドルにダウンロードする間、私は日本にもこの優れた作家コンラッドの研究グループがあることを知りました。私は日本の作家や映画製作者、漫画家の多くが、人間の精神の神秘に満ちた複雑さを描くコンラッドの作風の影響を受けているに違いないと思うのです。彼の作品の優れた翻訳は日本語訳でもきっと出版されていることと思います。

ジョセフ・コンラッドの人生は、彼の小説の登場人物と同様に、たいへん興味をそそられます。彼は1857年12月3日15時30分、ウクライナのベルディチェフに生まれた射手座です。ひとところになかなか留まれず、ずっと続く流浪の旅というテーマが出てきたのは、彼が生まれてからのことです。彼はポーランド人でしたが、彼の祖国は生まれた時には存在していませんでした。国家としてのポーランドは、その時、プロイセン、オーストリア、ロシアによって、三つに分割されていたのです。ここに、彼の祖国にまつわるアイデンティティーの矛盾があり、それは火の星座にとっては深刻な問題なのです。
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Joseph Conrad
the 3rd of December, 1857
3:30pm
Berdicev, Urkaine

コンラッドが4歳の時、彼の父親は政治的理由によってウラル山脈に追放され、厳しい天候の中で、彼が7歳で、彼の最初の土星がスクエアになった時にコンラッドの母親が死に、そして彼が11歳の時(最初の木星回帰)に父親も死にました。蟹座の土星は孤児、孤独、見捨てられることを意味します。また、究極的な悲しみというテーマや、結核(母親の死因)も表しています。コンラッドのチャートの木星は、とてつもなく興味深く、美しく、けれども痛みを伴う、このシンボルが意味するものをまさに表現しています。この木星は12室で冥王星とコンジャンクションして逆行しています。出生図において惑星が逆行している時、その惑星の性質の深い意味を見いだす必要があることを示しています。しかしまず最初に私たちはそのダークサイドを経験する必要があるのです。木星がもし正義、名声、情熱を意味するならば、コンラッドは不正や恥、そして恐れについて学ばねばならなかったのです。これらは全て冥王星によって強められ、幼いジョセフ・コンラッドは、冬の暗闇が9ヶ月も続くような土地で恐れおののいていたことでしょう。また、木星と射手座は長い旅を意味しますが、コンラッドはその人生のほとんどをかけて、世界の遠く離れた場所を旅したのです。

コンラッドは物心ついた頃から恥の意識に苛まれるようになりました。彼のその最初の記憶は、父親を訪ねて、牢獄のようなところに行かねばならなかったことでした。12室は放浪、牢屋、病院と関係があり、ウラル山脈での流浪の生活は、少年にとってある意味、幽閉されて過ごした時期だったとも言えるでしょう。しかし、ここで、彼の恥の感覚はとても複雑なものになっています。追放された父親を持つという恥の意識は、犯罪者ではないということで父を誇らしく思う気持ちによって償われているのです。父を英雄だと思う気持ちと不正の犠牲者であるという気持ちの入り交じったものとなりました。木星は道徳的な視点を持つ惑星であり、コンラッドの太陽である射手座の支配星なのですが、冥王星とコンジャンクションしていることから、人間の魂における善悪を超えたところの開かれた次元へと、個々を導いていくことになります。それゆえ、コンラッドの作品の中で、クルツ(”闇の奥”)のような登場人物たちは、一般的な道徳的観点からは裁くことなどできないのです。(続く)

闇の奥 (岩波文庫 赤 248-1)

コンラッド / 岩波書店


原文(英語)はコチラ
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by xavier_astro | 2012-09-02 00:00 | 心理  

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